配送ルートを最適化するには?作成時の課題と対処法
再配達問題の原因と解決策まとめ!1回で受け取ってもらうためにできること
- 再配達問題
再配達問題とは?再配達率の現状を知ろう!
荷物を受け取るユーザーにとって便利なサービスのひとつが再配達です。タイミングが合わず受け取れなかった荷物を、改めて都合の良い日時や場所で受け取れる再配達は、忙しい現代人のニーズにマッチしています。
しかし荷物を配達する運送会社側からすると、再配達は大きな問題となりつつあります。
再配達問題とは
再配達問題とは、取り扱う荷物量に比例して増加しつつある、再配達依頼に関する影響のことです。配達荷物の増加にともない、不在などによる再配達の件数も増加傾向にあります。
環境省によると、再配達によって生じるトラックのCO2排出量は、年間およそ42万トンにもおよびます。
配達した荷物量で報酬が左右されるドライバーにとって、再配達は負担のかかるサービスです。環境負荷も高くなるうえ、運送会社および国にとっても無視できない社会問題となっています。
出典:環境省「もっと自由な受け取りで宅配便の再配達を無くそう!」
再配達率と荷物量について
2022年に国土交通省が行った調査では、宅配便の荷物のうち約11.8%が再配達によるものでした。
ECサイトの利用者が増え、個人宅向けを中心に宅配便の取扱個数が大きく増加していることが要因です。例えば2010年は約32.2億個だった荷物が2021年には約49.5億個にまで増加しました。母数の増加にともない、再配達となる荷物数も増加の一途を辿っています。
出典:国土交通省「宅配便の再配達削減に向けて」
再配達問題はなぜ起きる?知っておきたい3つの原因
再配達問題を起こす原因は、さまざまです。やむを得ない事情もあれば、問題に関する認識不足によって再配達が生じることもあります。
再配達の主な原因としてあげられるのは、次の3つです。
1.配達が来ることを知らないから
国土交通省がユーザー向けに行ったアンケート調査では、再配達となった理由のうち約22.2%が「配達が来ることを知らなかったから」と答えています。
ECサイトの中には、注文日から出荷まで日数のかかる予約商品や一定の間隔で発送する定期購入サービスを取り扱っているところもあります。注文してから出荷日まで期間が開いていると、ユーザー本人が購入したことを忘れていたり、具体的な配達日時を把握できていなかったりするケースも考えられます。
ECサイトの多くは出荷後に通知メールを送信していますが、迷惑メールに紛れている場合も多々あります。そのため、必ずしも配達が来ることをユーザーが把握するきっかけになっているとはいえません。
出典:国土交通省「宅配便の再配達削減に向けて」
2.ライフスタイルが多様化しているから
前述の調査結果では、もっとも多い回答(約32.3%)が「配達日時が指定できない商品だった」です。
昔は複数世代が住居をともにしていたり、共働き家庭も少なかったことから、配達員が訪ねれば家族の誰かが受け取ってくれる環境でした。しかし現在は共働き家庭や単身層も増え、さらにライフスタイルも多様化しています。
残業などで留守が増えており、日時指定できない荷物をスムーズに受け取れないケースが少なくありません。若年層の単身世帯の比率が高い都市部では、地方よりもとくに再配達率が高い傾向です。
3.送料が無料だから
ECサイトの増加は価格競争の激化を招いています。類似商品を取り扱う場合、競合との差別化のために送料無料サービスを取り入れることがあります。受け取る側は購入時に「送料無料」の文字を目にしていることもあり、送料がかかっているという認識がありません。
再配達依頼も無料で利用できるため、荷物が届く予定を知っていても「後日また届けてもらえば良い」と考えがちです。サービスの一環ととらえて、気軽に利用している人も多いでしょう。
国土交通省と環境省の「COOL CHOICE」キャンペーンとは
宅配便の再配達増加は、前述のとおり環境負荷も起こしています。再配達による年間42トンのCO2排出量など多くの環境負荷を削減すべく、国土交通省および環境省が掲げているのが「COOL CHOICE」です。
COOL CHOICEは、宅配便の再配達を減らすために国が行っているキャンペーンのことです。再配達から生まれるCO2排出などの社会的損失や、1回で荷物を受け取ってもらうための取り組みについて情報を発信しています。
日本はSDGsや放置山林の問題など、多くの環境問題に対して国を挙げて取り組んでいます。再配達削減に関するCOOL CHOICEも国が主導する環境対策の一環です。
再配達問題を解決するためにできること
再配達問題によってドライバーの負担が増えれば、人材の流出につながります。物流業界は、再配達問題のほかにも、人材不足やドライバーの高齢化などが懸念されています。再配達がさらにドライバーの負担を増加させれば、物流業界はますます人手不足に陥りかねません。
サービスの安定供給を実現するためにも、再配達問題は早期に解決すべきです。ここでは再配達問題を解決するために実践できる施策を紹介します。
事前に配送日時を知らせる
2022年時点の調査で、全体の約2割を占めるユーザーが「配達が来ることを知らなかった」から再配達を依頼することとなったと答えています。言い換えると、再配達の約2割は事前に配送日時を知らせることで、1回目の配達のみで済む可能性があります。
利用者に対して、メールやアプリで配達日時の予定を提供する仕組み作りが必要です。
時間帯指定ができるようにする
ライフスタイルの多様化に対応することが問題解決への近道です。ユーザーが在宅している時間帯や受け取れる日時をあらかじめ指定してもらえば、不在中に配達する無駄は生じません。
時間帯指定サービスは、何度も変更できるなど利便性を高めることがポイントです。急に予定が変更となったときも、手軽に時間帯指定ができれば、事前に手続きを済ませてもらえます。
再配達による損失について知ってもらう
ユーザー側に「配達にはコストがかかっていること」や「再配達には環境負荷がかかっていること」と知ってもらうのも対策のひとつです。再配達による損失がドライバーの負担のみならず、環境など幅広く影響していることを認知してもらえば、荷物の受け取りに対する意識を高められます。
コンビニや駅のロッカーで受け取れるようにする
ユーザーの利便性を高めて再配達問題を解決するために、自宅への配達以外の受け取り方法も活用しましょう。自宅以外でも受け取れるようになれば仕事の休憩時間や通勤途中に受け取れるため、再配達の件数を削減できます。
自宅以外の受け取り方法としては、コンビニや駅のロッカーなどが効果的です。ユーザーは配達時間を気にせずに受け取れるうえ、自宅住所を知られずに済むメリットもあります。
置き配を可能にする
近年は大手ECサイトが置き配をデフォルト化した影響もあり、多くのユーザーが非対面での配達を利用できるようになりました。玄関前やガスメーターボックス内といった、あらかじめ指定した場所に配達する置き配は、ドライバーもユーザーも日時を気にせずに済むことがメリットです。
ただし、盗難や雨天時の汚損など、非対面ゆえのトラブルリスクもあります。あくまでユーザーが置き配を希望したときのみ行うなど、トラブルを考慮したうえでのサービス提供を意識することが大切です。
宅配ボックスへの配達を促す
近年は分譲マンションや賃貸アパートなどの集合住宅のみならず、個人宅でも宅配ボックスを設置するケースが増えてきました。「日時を気にせずに済む」「非対面で受け取れる」などメリットを伝え、宅配ボックスへの配達を促せば、留守中も配達できます。
大手企業の中には、アプリや会員用サイトで宅配ボックスへの配達を指定できるところもあります。社内システムや環境を整備して、ユーザーに宅配ボックスへの配達も提案してはいかがでしょうか。
1回で受け取った人にポイントを付与する
再配達をルールで防止する施策に加えて、ユーザーが積極的に「1回で受け取りたい」と思えるような施策も必要です。例えば1回で荷物を受け取ってくれたユーザーに対してポイントを付与すれば、メリットを感じてもらいやすくなります。
自宅以外での受け取りや平日の受け取りなど、ドライバーの負担軽減が期待できる場合は、インセンティブをつける方法もおすすめです。
再配達を有料化する
従来は、再配達にかかるコストを運送会社が負担していました。ユーザーの意識を変えるために、再配達を有料化することも検討してはいかがでしょうか。必要以上の費用がかかると分かれば、多くのユーザーが1回で受け取ろうと対処してくれます。
ただし、導入時は慎重なルール整備が必要です。中には「洗濯物を干している間に来た」「トイレorお風呂に入っているときに来た」など、わずかなタイミングのずれで受け取れないケースもあります。
在宅していたにもかかわらず、偶然受け取れなかったユーザーからすると、再配達の有料化は理不尽に思われかねません。有料化を導入するときは、ユーザーに不利益が生じないよう考慮することが重要です。
まとめ
再配達問題は、さまざまな要因によって深刻化しています。基本的に無料で再配達してきた経緯もあり、ユーザーの多くが「再配達依頼をすれば良い」と気軽に考えている現状があります。
受け取り方法の選択肢を増やしたり、事前に配達予定を通知したりとユーザーの利便性を向上させ、1回の配達で受け取ってもらえる工夫を取り入れていきましょう。